ルンバシリーズは「ルンバ890」がお買い得!?

週刊アスキーでルンバシリーズ3機種(ルンバ980、ルンバ890、ルンバ690)の比較対決記事を執筆しました。ルンバというと天面にカメラを内蔵し、自己位置推定とマッピングを同時に行う「SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)」技術を搭載したルンバ980が最上位モデルなのですが、結果は意外なことになりました。

意外というか……みたいな部分もあるんですけどね。だってCEOのコリン・アングルはん、あんた言うてたやん……みたいな感じです。当時すでにSLAM技術を搭載したロボット掃除機はあったのですが、そのときに「ルンバは1カ所をさまざまな角度で5回以上踏破することによって床のゴミの取り残しをなくすんだ。一筆書きみたいに1回踏破しただけでは取り残してしまう」って話していたんですよ。もちろん、そのときから当然SLAM技術は持っていたけど、信頼性やコストの問題で市場には出していなかったから、ポジショントークという部分もあるというのは十分に理解しているのですが。

ガチンコでテストしてみると、ルンバ690はちょっと物足りない結果だったのに対し、890が「ちょっと待ってよ、できがよすぎでしょ」というくらいの好成績。さすがに980といえども、これを上回る実力を発揮するのは難しいのでは?……と思ったのですが、見た目からして及ばないという残念な結果に終わってしまいました。

もちろん、スタートボタンを押して1時間掃除しただけの結果なので、これで890最高!と断言するのは難しいのですが、980はゴミの取り残しがあり、さらにまだ掃除できる余力があるのにもかかわらず(連続掃除時間が最大60分なのに、約30分で自動的にホームに戻りました)、打ち切ってしまったのはこのテストにおいては痛い失敗でした。

それとは別に、動きに関してもちょっと残念なお知らせ。ルンバ890、690はダートディテクト機能が働くと、散歩がうれしくてしょうがないわんわんのようにその周囲を一周してゴミを取り切ろうとするのですが、980は前後にゴシゴシこするような動きをするのみ。ダート(ホコリ)をディテクト(検知)した直後の挙動が、正直に言って「なおざり」になった感じがありました。

サイドブラシを搭載しないダイソン陣営が言うように、サイドブラシはゴミやホコリをまき散らしてしまう場合もある(実際にはうまいこと巻き込んで飛び散らないようにしている印象ですが)のも事実ですし、本体幅に比べて吸引口が狭いというのに不安を覚えるのも事実。その不安を解消する上でランダム走行(実際にはランダムではなく「ランダムに見えるけど統計的に部屋中を5回は踏破できる動きとのことですが)が役立つし、しつこいぐらいに念入りなダートディテクト後の動きも理にかなっていると思ったのですが。

ものすごく脱線しますが、800シリーズから900シリーズのようにガラリとシステムを変える場合、どこかにソフトランディングの考え方も必要なんじゃないかなという気がします。例えば炊飯器の場合、現在ほとんどの大手メーカー、というか三菱電機以外が最上位モデルに圧力IH方式を採用しています。最後発という意味ではタイガー魔法瓶でしょうか。タイガーは土鍋釜を採用していたため、土鍋を焼成する際に生じるわずかな形の違いが圧力IHを実現するのが難しかった……と最初の土鍋圧力IHを採用したときの発表会で聞きました。圧力IHが主流になっている中で、内釜で特徴を出していたためにそのトレンドに乗れなかったというわけですね。

しかし技術的に可能になったからと言って、従来の土鍋IHが実現していたちょっと硬めの炊き上がりから、圧力IHならではのふっくらもちもち、悪く言えばちょっと歯ごたえのない仕上がりにガラリと変えるわけにはいきません。そりゃあ、「この味が究極!」といっていたのに、その次の年には全く違う炊き上がりだ「これこそ至高!」というわけにはいきませんよね。だからこそ、圧力を使っているけどもちもちしすぎないような炊き上がり……というところにソフトランディングしたわけです。

ルンバ800シリーズから900シリーズへの移行は、そういう意味ではちょっとハードランディングだったのかなという印象が拭えません。念入りに掃除するモードを選ぶことはできるものの、ダートディテクト後に前後するだけというのは個人的にはなしですね。実際に使っているユーザーの場合、今回のテストのようにわざわざゴミをまくわけではないので、こういう印象を持つことはないかもしれません。しかし、せっかくなので800シリーズまでのいいところもオプションとして選べるようになればいいのに……と思った次第です。

そもそも、ルンバ980が登場した当初は、掃除結果の「見える化」ができませんでした。掃除結果をマップで見える化できていたのはダイソンだけだったのですが、アプリのバージョンアップによってそれが可能になりました。何もかもがアプリ経由で進化できるわけではないですが、今後もそうやって進化していってほしいものです。

安蔵 靖志

IT・家電ジャーナリスト 家電製品総合アドバイザー(プラチナグレード)。AllAbout 家電ガイド。ビジネス・IT系出版社を経てフリーに。デジタル家電や生活家電に関連する記事を執筆するほか、家電のスペシャリストとしてテレビやラジオ、新聞、雑誌など多数のメディアに出演。KBCラジオ「キャイ~ンの家電ソムリエ」に出演中。その他ラジオ番組の家電製品リサーチや構成などにも携わっている。

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